55か月め

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今日は2011年3月11日から1,675日め
4年7ヶ月
55回めの11日です。

今年の8月から9月に青山-横浜と開催になった
震災後3度めの「東日本」と名付けた展覧会を終え

どっと疲れが、これはきっと4年半分の疲れが押し寄せてきて、
ここ2~3週間、フワフワした日々を送っていました。

これまで絵を通して出会った方とかわしたコミュニケーション、
それを自分の血肉に変えてゆくには、
それなりの時間が必要とされそうです。

ところで、ボクがこんな疲れ方をしているのであれば、
被災された方の今はどんなであろうか?

ボクごときがいくら想像しても追いつかないことなんですが、
それでもあの日から4年7ヶ月を前に、
震災後の定点観測地となっている
福島県いわき市の豊間のビーチを見てきました。

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今回は初めて、JRいわき駅からランニングで豊間を目指しました。

まっすぐ行けば15kmくらいですが、
寄り道しながらの20kmくらいのフィールドワーク。

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過去のフィールドワークは全て夏でしたが、
今回は初めて秋。

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土地の豊さや、お百姓仕事の知恵なんてものを感じながら、
TPPの時代で変わらぬこと、失われてしまうことなど、
やはり追いつかないながらも、想像してみました。

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太平洋は波消しブロックにぶつかり、
ズンという低音を響かせてました。

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岬の切り通しを抜け、
津波で失われ薄磯地区が視界に入ったところで
つい「うわ!」と声をあげてしまいました。

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「喪失の悲惨な風景」は「圧倒的な再開発の風景」に

ボクは絵描きなので、
まずは記憶していた色彩と全く違う色で塗り潰された土地を目にし
しばらくは言葉を失いつつも、
工事現場のおじさんに「変わりましたね〜」と言ってみると、
「変わったね〜」「全く変わっちゃって驚いたでしょう」と、

現場で日々作業を続けている人であっても、
刻一刻と更新されてゆくドラスティックな変化を
目の当たりにしてるってニュアンス。

ボクもおじさんも「復興」のダイナミックな風景に直面している。

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前回ここに来たのは1年2か月前。

豊間2014夏

そこは未だ震災の渦中にある場所でしたが、
今は復興の真っ只中。

防波堤に描かれた「がんばろう」みたいなメッセージや、
子供たちの描いた地域愛に溢れた絵はも失われ、
1人ひとりの未来に対する想像力が試されているような
グラウンドゼロとしての風景。

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この地区に限らず、震災の現場の多くは、
住民に対する平等原則のもと、
復興事業が動くまでの「調整」に多くの時間と労力をかけたはずで、
それが「復興が遅々として進まない」という風景になっていたはず。

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しかし、事が一旦動き出すと、
ここまでドラスティックな変化を地域社会に与えるんだ。

定点観測的に通ってきて、
そろそろ5年というところで感じたことに、
今まで積み重ねてきたことが足元からすくわれたように思った今回。

「威容」を感じてきた塩屋埼の灯台も、
どこか所在なさげにしてるように見えた2015年10月。

さらに切り通しの抜け、
何度も絵にしてきた豊間のビーチへ。
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そこでボクはさらに本格的に「うわーっ!」と叫んでしまった。

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圧倒的な防潮堤の建設と住宅地のかさ上げ工事。

2011年に被災の現場として初めて足を運んだ豊間のことを、
ボクは「突然月面に放り出されたようなもので」「感情が動かない」

福島県いわき市豊間でごく個人的に考えたこと


そんなだったはずだけど、

今回もまた「月面に放り出されたよう」であり、
その後の「感情が動かない」の種類がちょっと違うのかな?と。

それがどんなことなのか、
これからの創作のテーマのひとつになってくるのだけど、
今はただ驚いているだけの自分であればいいはずだ。
きっと。

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それでも、何よりもボクを圧倒するのは、
4年前も今も変わらず太平洋であり、空であり、豊間というビーチの美しさ。
そのわずかな隙間に生きている人の尊さであり、切ないほどの美しさ。

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復興の一歩目は、
土地を無表情に塗りつぶしてゆくことで、
それはどうにも仕方のないことなんだろうけど、
ではその先でボクたち1人ひとりはどんな色を選び、
日常を塗りあげて行くんだろうか?

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願わくば、人ひとりの愛しさへのイマジネーションと
自然に対する敬意に溢れた品のある色彩が織りなす、
この土地ならでは風景が生まれますよう。

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真の復興は1人ひとりの心持ちの問題であり、
焦らず育てて行かねばならないことだろうなあと感じた、
10月10日午後から夕方にかけての時間。

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「高台」が新たね造成され、そこに人が暮らす。
その無常にも思える絶対的なイメージに、
今は思いっきり負けてる自分でいいや。

帰り際のセブンイレブンでビールをひと缶。
顔を覚えていた店長さんに
「ずいぶん風景が変わりましたね」と声をかけてみたら、
「そうだね〜、海が見えなくなっちゃってね」と、
そう言って見せた一瞬の寂しそうな表情。

自分が抱えて持って帰れるものは、
これくらいのことが精一杯だし、
だからと言って、
簡単にどうこ出来るものだなんて
少しも思えないでいる。

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余談になるけど、
東京の新国立競技場建設に関するゴタゴタは、
人にとってとても大切なものをすっ飛ばした、
幼い発想のものであったとと、強烈に実感したよ。

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そして、
豊間という場所、
ボクにたくさんの考えを与えてくれてありがとう。

そして4年7ヶ月にして、あらためて、
ここに暮らし失われてしまった1人ひとり
その命の尊さに想像力を働かせながら、
いわき駅までのバスに揺られてみました。

2015
1010

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