フリーランスの契約課題ハッカソン


フリーランスの働き方について考える初の試み「みんなでつながる!フリーランス月間」
4月9日は先週のアイデアソンに続き「フリーランスの契約課題を考えるハッカソン」。

ともかくアイデアを出し合った「アイデアソン」を足場に、それを実行に移すためのテクニカルなアイデアの共有とブラッシュアップを繰り返す、「ハッカー」的作業を「マラソン」的に5時間行う「ハッカソン」です。

日本労働組合総連合会「連合」の主催で、ファシリテーター原 亮さんの見事な司会の元、日本の労働人口の4分の1に当たる、フリーランス(曖昧な雇用という側面がある)の働き方、発注受注の関係の中での契約についてなど、より良いものにするためにはどんなアイデアがあるのか、フリーランスで働く誰もが共有出来るであろう問題解決のための大きなターゲットを設定し、オープンに語り合いアイデアを交換し、問題解決に役立つシステム構築を楽しく行いました。

という作業をする前に実例報告。

先週の声優業界やデザインワークでの実例に続いて、今週は映画業界のギャラのあり方や働き方について、NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」のSAORIさんが登壇。

長年小道具をやってこられた方ですが、
映画業界で働く女性は、子どもが産まれると職を離れることがほとんであることから、映画の仕事を子育てしながら出来るものにしたく、NPOを設立されたそうです。

映画製作での働き方は、「準備期間のパート」「現場のパート」に別れていて、作品単位の契約となります。
ギャラは1か月単位の契約で、労働時間の明記は無く、その間働かせ放題。
現場パートでは、撮影の時間帯を決められず、1日の労働時間がわからないまま働く状況。
また、撮影の休み日は準備に充てなければならず、休みにならないとのこと。SAORIさんの経験では、4ヶ月無休であったこともあったそうです。(自分も4年くらい休めてないかも、、)

映画業界で働く方はみなさんフリーランスなので、一般の労働のあり方を知らず、SAORIさんの場合は、お子さんが出来たことで知り合いになった、ママ友との会話で「働くことには休むことも含まれている」ことに気がついたそうです。
(この辺、イラストレーターにも当てはまるよね、、)

忙しく休みの無い状況は、判断力を失ってしまい、たとえば現場のハラスメントなどに対しても鈍感になってしまい、働き方の改善などが発想される余地も無くなってしまう。結果、映画が好きでこの仕事をしているが、映画を観にゆく余裕は無いという、悲しい矛盾が生まれています。

定期的に休みがあることは、仕事を続ける上での安心感になるという実感が語られました。

しかし、こうした仕事の現場で契約書というものを見たことが無い。
がしかし、慣例で縛られる業界の中で声を上げることは難しく、また、労働時間を整えることとで映画の制作費が高騰するという、日本の映画製作の相容れない現状もあります。

現状、
NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」に入会すると、フリーランス協会のサービスを半額で受けられると共に、働き方の基準が示されたクレジットカードサイズの会員証が発行されるそうです。


フリーランスで働く人のストレスチェック、いいアイデアだな〜。

こうしたSAORIさんの活動の源泉は「映画が好き」であることであり、何かに抗うというより、「この仕事を良いものにしたい」という願いであることが、素晴らしいと思いました。

で、
ボクからアメリカの映画界の働き方の質問。

・俳優から小道具までギルドがあり、契約した時間が10分でもオーバーすれば対価が支払われる。
・プロデューサーはお金の管理。監督が撮影を2日伸ばしたらクビになることもある。

とのこと。

さらに質問、
日本の映画界では、関わった映画が大ヒットした際に特別報酬はあるか?

・大入袋として関わった映画のDVDが配られた。。
・稀だが、2万円ほど配れれたことがある。

もしくは、
小道具として作ったものが知らぬ間にグッズになっていたことがある。

なるほどなあ〜。。

そして、
先週に引き続きグラフィックデザイナーの西村淳一さん登壇。
お話は先週を踏襲しつつ、著作権や契約、同実制の保持や著作者人格権について、実例を挙げて語ってくれました。
こうしたことは、自分が働くイラストレーター協会がやらないとね。

そしてハッカソンスタート。
オンラインも含めた5つのグループに分かれて、先週出たテーマを参照しつつ、さらなるアイデアのブラッシュアップ。

今回、先週のボクのレポートに触発されたイラストレーター仲間の吉實 恵さんがご参加くださりました。さらに、Yahoo!に勤めながらフリーランスの仕事にも携わるHさんとボクと3人のグループでハッカソン開始。

まず自己紹介。

・名前の仕事
・ハッカソンに期待すること
・今の自身の身体やメンタルの様子

以上を30秒以内で。

これは「一般的」に語られる社会的立場の上下を外す作業だね。

その後各チームのテーマを決める作業。

先週出たのは、
・オンラインやAIを駆使した簡易な契約システム
・フリーランスで働く人に寄り添うAIによる問題共有システム
・オンライン上に約款を置くシステム

自分が参加したチームは、
・フリーランスにとって理想的な働き方を提供した企業に「ありがとう」を伝えるアワード創設。

これは働く者と雇用側とで対抗するでなく、お互い力を合わせて日本の働き方を良くし持続可能な仕事を育ててゆこう!などという壮大な目標に向かってのアイデアでした。

これがけっこうみなさんに刺さったようで、各グループ、テクニカルな契約システムに良き雇用側を讃えるアイデアを盛り込んでいました。

が、ボクたちのグループは、あらためて働く意味から問うことからスタート。3人それぞれが「これまでやってきた中で最高の仕事」「最悪な仕事」を、ボクが良くやる一本の線で表すワークショップで表現。

その仕事の中でと「喜び」と「残念」な成分の分量を1枚の紙に1本の線で描き分ける、誰でも出来る作業。
「最悪な仕事って線引きづらいよね〜」などと皆さんの口からホンネがこぼれる、が、意外や、

「最高の仕事」の中にも「最悪な仕事」の中にも自身が改善すべき問題が、グラフィカルに現れたではないですか。

3人それぞれがその仕事の背景を語り共有した後、我々はフリーランスで働く上での契約の必要を語っていて、それは「良き仕事をするためには、最低限の足場としての契約などが必要だよね」という認識の共有は、先週までに出来ていた。

が、実は、
働くためのモチベーション「私はこの仕事を良きものにしたい」ということ”も”大切だよね。さらには、「良き仕事を次の良き仕事に繋げたい」という足場が見えたように思いました。

そこで今回チームとして目指す風景を、

発注受注の縦関係をフラットにし仕事を持続可能なものにする。

に設定。

そこで、
フリーランス側のポジティブなマインドという足場を確認した上に、仕事の足場としての契約を置けたらいいね。
そんな考えを共有した上で3 人のハッカソンを継続。

シリアスな話を笑顔で交換しながら浮上したのは、フリーランスが働くためのマッチングアプリ「フラッター」

フリーランスが仕事を見つける際、
雇用側がフリーランスを見つける際、

お互いが求めるもの、”ギャラ”や”労働条件”だけでなく、”モチベーション”や”仕事に対する愛”などを入力。

自分にふさわしいと思える仕事が見つかったら、(ここでは1本の線で表現したような人に親和性のあるグラフィックも活用)

・先方の仕事に対する理念の「確認しました」のボックスにチェック


・仕事上のトラブルを避ける約款の「確認しました」のボックスにチェック

で簡易契約が成立したとして仕事相手と繋がる。

その後、ギャラの見積りや請求のフォーム、さらなる詳細契約が可能なフォームなど利用出来る。

そして、
仕事完了後、もしなにか問題が発生したら、
・該当仕事に対し仕事上問題を書き込み送信出来るフォームを置く。

これは、直接クライアントに向かうのでは無く、AIで解析し(この辺まだアイデア足りず)、良き仕事のあり方が可視化されるデーターベースに集積され、オープンソースとし、社会全体で良き働き方を考えるための素材とする。

そして!
年に一度、フリーランスにとって理想的な仕事を創造した企業を「フリーランスにやさしい仕事大賞」として表彰。

表彰された企業に、日本のフリーランスの働き方を良くするためのアイコンとなってもらう。

労働人口の4分の1を占めるフリーランスで働く人が、「あの企業と仕事したい」という意思が可視化されることで、それに続く企業が生まれてくれたらいいな〜

というところまで考え、寸劇を介した発表会へ。

実は、吉實から「もっと受注側の意識を高める必要がある」との指摘があったり、このアプリは高額の契約案件に適しているかの検証は、タイムアップで出来ず。

しかし、審査という立場で講評をくださった皆さんから高く評価頂き、アワード創設に関しては、実際に予算がつくのでは?というところまでやれました。

他のグループが受注側が発注側を格付けするといった一方向の矢印案であったのに対して、発注受注のどちらにも仕事の喜びの矢印が向かう、共生型の社会の実現という大きな風景を描けていたのが良かったのかなと、思いました。

いや、他のグループ提案のテクニカルなアイデアすべてが面白くて、今フリーランスの働き方に真剣に楽しく考える現場が創られたってことに、ものすごい意義を感じたのでありました。

再来週の研修発表会に向けて、来週もさらに分科会があるのだが、
https://jtuc-network-support.com/minfree/#040209_corner
きっと出席しちゃうんだろうな〜

前回はボク1人がフリーランスのイラストレーターとして出席。
しかし、今回は吉實さんご参加ということで、参加者倍増!

興味あるフリーランスの方、お声掛けくださいね〜

 

 

 

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  1. […] 「みんなでつながる! フリーランス月間」(主催:連合、協力:KSI、後援:厚生労働省ほか)の第二弾「フリーランスの契約課題を考えるハッカソン」を4月9日(土)に開催しました。[写真]ハッカソン終了後の集合写真[写真]ハッカソン開始前のインプットトーク。NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」のSAORIさん(中央)、グラフィックデザイナーの西村淳一さん(左)前回のアイディアソンで出たテーマをもとに、今回のハッカソンでは実際にかたちにしていきます。今回はオンラインを含む5チームに分かれ、最後は寸劇で発表しました。[写真]ハッカソンの様子マッチングアプリ、LINEを使ったサービスの提案、口コミを使ったオンライン上での情報共有、フリーランスの支援サイト「Wor-Q」のさらなる活用など、発注者と受注者がお互いに対等な立場から安心して契約し仕事を進めていくための具体的な未来が、発表を通して表現されていきました。[写真]各チーム寸劇で発表しました今回も参加された小池アミイゴさんがブログにまとめています。ぜひご覧ください。・フリーランスの契約課題ハッカソンhttps://yakuin-records.com/amigos/?p=15309 […]

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