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フリーランスの契約課題ハッカソン

2022 年 4 月 10 日 日曜日


フリーランスの働き方について考える初の試み「みんなでつながる!フリーランス月間」
4月9日は先週のアイデアソンに続き「フリーランスの契約課題を考えるハッカソン」。

ともかくアイデアを出し合った「アイデアソン」を足場に、それを実行に移すためのテクニカルなアイデアの共有とブラッシュアップを繰り返す、「ハッカー」的作業を「マラソン」的に5時間行う「ハッカソン」です。

日本労働組合総連合会「連合」の主催で、ファシリテーター原 亮さんの見事な司会の元、日本の労働人口の4分の1に当たる、フリーランス(曖昧な雇用という側面がある)の働き方、発注受注の関係の中での契約についてなど、より良いものにするためにはどんなアイデアがあるのか、フリーランスで働く誰もが共有出来るであろう問題解決のための大きなターゲットを設定し、オープンに語り合いアイデアを交換し、問題解決に役立つシステム構築を楽しく行いました。

という作業をする前に実例報告。

先週の声優業界やデザインワークでの実例に続いて、今週は映画業界のギャラのあり方や働き方について、NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」のSAORIさんが登壇。

長年小道具をやってこられた方ですが、
映画業界で働く女性は、子どもが産まれると職を離れることがほとんであることから、映画の仕事を子育てしながら出来るものにしたく、NPOを設立されたそうです。

映画製作での働き方は、「準備期間のパート」「現場のパート」に別れていて、作品単位の契約となります。
ギャラは1か月単位の契約で、労働時間の明記は無く、その間働かせ放題。
現場パートでは、撮影の時間帯を決められず、1日の労働時間がわからないまま働く状況。
また、撮影の休み日は準備に充てなければならず、休みにならないとのこと。SAORIさんの経験では、4ヶ月無休であったこともあったそうです。(自分も4年くらい休めてないかも、、)

映画業界で働く方はみなさんフリーランスなので、一般の労働のあり方を知らず、SAORIさんの場合は、お子さんが出来たことで知り合いになった、ママ友との会話で「働くことには休むことも含まれている」ことに気がついたそうです。
(この辺、イラストレーターにも当てはまるよね、、)

忙しく休みの無い状況は、判断力を失ってしまい、たとえば現場のハラスメントなどに対しても鈍感になってしまい、働き方の改善などが発想される余地も無くなってしまう。結果、映画が好きでこの仕事をしているが、映画を観にゆく余裕は無いという、悲しい矛盾が生まれています。

定期的に休みがあることは、仕事を続ける上での安心感になるという実感が語られました。

しかし、こうした仕事の現場で契約書というものを見たことが無い。
がしかし、慣例で縛られる業界の中で声を上げることは難しく、また、労働時間を整えることとで映画の制作費が高騰するという、日本の映画製作の相容れない現状もあります。

現状、
NPO法人「映画業界で働く女性を守る会」に入会すると、フリーランス協会のサービスを半額で受けられると共に、働き方の基準が示されたクレジットカードサイズの会員証が発行されるそうです。


フリーランスで働く人のストレスチェック、いいアイデアだな〜。

こうしたSAORIさんの活動の源泉は「映画が好き」であることであり、何かに抗うというより、「この仕事を良いものにしたい」という願いであることが、素晴らしいと思いました。

で、
ボクからアメリカの映画界の働き方の質問。

・俳優から小道具までギルドがあり、契約した時間が10分でもオーバーすれば対価が支払われる。
・プロデューサーはお金の管理。監督が撮影を2日伸ばしたらクビになることもある。

とのこと。

さらに質問、
日本の映画界では、関わった映画が大ヒットした際に特別報酬はあるか?

・大入袋として関わった映画のDVDが配られた。。
・稀だが、2万円ほど配れれたことがある。

もしくは、
小道具として作ったものが知らぬ間にグッズになっていたことがある。

なるほどなあ〜。。

そして、
先週に引き続きグラフィックデザイナーの西村淳一さん登壇。
お話は先週を踏襲しつつ、著作権や契約、同実制の保持や著作者人格権について、実例を挙げて語ってくれました。
こうしたことは、自分が働くイラストレーター協会がやらないとね。

そしてハッカソンスタート。
オンラインも含めた5つのグループに分かれて、先週出たテーマを参照しつつ、さらなるアイデアのブラッシュアップ。

今回、先週のボクのレポートに触発されたイラストレーター仲間の吉實 恵さんがご参加くださりました。さらに、Yahoo!に勤めながらフリーランスの仕事にも携わるHさんとボクと3人のグループでハッカソン開始。

まず自己紹介。

・名前の仕事
・ハッカソンに期待すること
・今の自身の身体やメンタルの様子

以上を30秒以内で。

これは「一般的」に語られる社会的立場の上下を外す作業だね。

その後各チームのテーマを決める作業。

先週出たのは、
・オンラインやAIを駆使した簡易な契約システム
・フリーランスで働く人に寄り添うAIによる問題共有システム
・オンライン上に約款を置くシステム

自分が参加したチームは、
・フリーランスにとって理想的な働き方を提供した企業に「ありがとう」を伝えるアワード創設。

これは働く者と雇用側とで対抗するでなく、お互い力を合わせて日本の働き方を良くし持続可能な仕事を育ててゆこう!などという壮大な目標に向かってのアイデアでした。

これがけっこうみなさんに刺さったようで、各グループ、テクニカルな契約システムに良き雇用側を讃えるアイデアを盛り込んでいました。

が、ボクたちのグループは、あらためて働く意味から問うことからスタート。3人それぞれが「これまでやってきた中で最高の仕事」「最悪な仕事」を、ボクが良くやる一本の線で表すワークショップで表現。

その仕事の中でと「喜び」と「残念」な成分の分量を1枚の紙に1本の線で描き分ける、誰でも出来る作業。
「最悪な仕事って線引きづらいよね〜」などと皆さんの口からホンネがこぼれる、が、意外や、

「最高の仕事」の中にも「最悪な仕事」の中にも自身が改善すべき問題が、グラフィカルに現れたではないですか。

3人それぞれがその仕事の背景を語り共有した後、我々はフリーランスで働く上での契約の必要を語っていて、それは「良き仕事をするためには、最低限の足場としての契約などが必要だよね」という認識の共有は、先週までに出来ていた。

が、実は、
働くためのモチベーション「私はこの仕事を良きものにしたい」ということ”も”大切だよね。さらには、「良き仕事を次の良き仕事に繋げたい」という足場が見えたように思いました。

そこで今回チームとして目指す風景を、

発注受注の縦関係をフラットにし仕事を持続可能なものにする。

に設定。

そこで、
フリーランス側のポジティブなマインドという足場を確認した上に、仕事の足場としての契約を置けたらいいね。
そんな考えを共有した上で3 人のハッカソンを継続。

シリアスな話を笑顔で交換しながら浮上したのは、フリーランスが働くためのマッチングアプリ「フラッター」

フリーランスが仕事を見つける際、
雇用側がフリーランスを見つける際、

お互いが求めるもの、”ギャラ”や”労働条件”だけでなく、”モチベーション”や”仕事に対する愛”などを入力。

自分にふさわしいと思える仕事が見つかったら、(ここでは1本の線で表現したような人に親和性のあるグラフィックも活用)

・先方の仕事に対する理念の「確認しました」のボックスにチェック


・仕事上のトラブルを避ける約款の「確認しました」のボックスにチェック

で簡易契約が成立したとして仕事相手と繋がる。

その後、ギャラの見積りや請求のフォーム、さらなる詳細契約が可能なフォームなど利用出来る。

そして、
仕事完了後、もしなにか問題が発生したら、
・該当仕事に対し仕事上問題を書き込み送信出来るフォームを置く。

これは、直接クライアントに向かうのでは無く、AIで解析し(この辺まだアイデア足りず)、良き仕事のあり方が可視化されるデーターベースに集積され、オープンソースとし、社会全体で良き働き方を考えるための素材とする。

そして!
年に一度、フリーランスにとって理想的な仕事を創造した企業を「フリーランスにやさしい仕事大賞」として表彰。

表彰された企業に、日本のフリーランスの働き方を良くするためのアイコンとなってもらう。

労働人口の4分の1を占めるフリーランスで働く人が、「あの企業と仕事したい」という意思が可視化されることで、それに続く企業が生まれてくれたらいいな〜

というところまで考え、寸劇を介した発表会へ。

実は、吉實から「もっと受注側の意識を高める必要がある」との指摘があったり、このアプリは高額の契約案件に適しているかの検証は、タイムアップで出来ず。

しかし、審査という立場で講評をくださった皆さんから高く評価頂き、アワード創設に関しては、実際に予算がつくのでは?というところまでやれました。

他のグループが受注側が発注側を格付けするといった一方向の矢印案であったのに対して、発注受注のどちらにも仕事の喜びの矢印が向かう、共生型の社会の実現という大きな風景を描けていたのが良かったのかなと、思いました。

いや、他のグループ提案のテクニカルなアイデアすべてが面白くて、今フリーランスの働き方に真剣に楽しく考える現場が創られたってことに、ものすごい意義を感じたのでありました。

再来週の研修発表会に向けて、来週もさらに分科会があるのだが、
https://jtuc-network-support.com/minfree/#040209_corner
きっと出席しちゃうんだろうな〜

前回はボク1人がフリーランスのイラストレーターとして出席。
しかし、今回は吉實さんご参加ということで、参加者倍増!

興味あるフリーランスの方、お声掛けくださいね〜

 

 

 

フリーランスの契約課題アイデアソン

2022 年 4 月 3 日 日曜日


4月2日に参加した『フリーランスでの働き方や契約』に関するアイデアソンがとても面白かったので、
備忘録。

連合が主催で、紀尾井町戦略研究所株式会社が事務局を務めて運営。
政治的背景の無い場で、フリーランスの働き方についてポジティブなアイデアを導き出す方法に共感。
ボクは、復興庁に出向し震災復興に尽力された方からお誘いを受けての参加です。


ボクは東京イラストレーターズ・ソサエティの副理事長に就いた4年前から、
イラストレーターにまつわる問題解決のディスカッションを密に重ねてきました。
今回、イラストレーターという枠組みから踏み出し、
他業種の方々と『フリーランスで働く』ことについて情報共有とディカッションしたことで、
視界が大きく広がったイメージがあります。

アイデアソンの冒頭、3業種の方から事例報告。


・声優でナレーターの方。

30分番組のアニメーション/1クルー_3ヶ月/13本のアフレコ収録の場合、
声優は毎週、たとえば水曜日の7時間ほどを6ヶ月拘束される。

アニメーション1本で駆け出しの声優のギャラは15,000円に設定されていている。
作品が再放送されると×1.8の計算で27,000円が支払われる。

毎年個人ランクの更新があり、1,000円刻みでアップされるが、
ほとんどの声優が18,000円ほどで上げ止まりになる。
さらに、現場では「18,000 円は高い」と言われてしまう。

主役級の声優は、毎回アフレコの仕事があるが、
脇役は13本のうち数本だけの場合が多く、
ひとつのアニメーションの仕事でギャラは10万円ほどにしかならない。

こうしたことは日本俳優連合が過去に規定にしたもので、
個人事業主である声優がクライアントと契約書を交わすことは無い。

これらの発言は記事になっています。
https://www.j-cast.com/2022/03/02432205.html?p=all

声優さんは雇用不安で問題提起出来ない。
飲み会レベルでは愚痴は出るが…
このシステムに異を唱えた声優さんがいたが干されてしまったこともある。

声優さんは、ヒット作周辺のプロモーションや歌唱で稼ぐことは出来る。
それに惹きつけられ人気職業の上位にも上がる声優だが、
その華やかな風景で見えなくなっている働き方というものがある。


・デザイナーさんが経験した無断転用と裁判の話。

勤務7年、フリー3年、法人化11年。デザイナー団体には未参加。
グラフやマップ作成を得意とされるデザイナーさんのフリーランス時代。

ある本に提供した大量のデザイン、その1点1点の単価は安いが、
それをそのまま別の本に、色や細部を変えただけで無断で使われてしまった件。

これまで10年ほど付き合いのあった出版社との慣例で、
契約を交わすことなく進めた仕事でのトラブルということで、弁護士に相談。

訴訟では記憶や請求書、メールなどを検証。
二次仕様に関する取り決めが無いことを確認。

これらにより裁判で勝利できた。

=解決方法=

意思表示=文章を残す

有利な契約を結ぶ

慎重にメールを送る

正確な見積と請求書の作成

特にメールは記録として残る可能性があるので大切にする。

そもそも、こうした契約を結ぶ慣例が無いこと。
ギャラ交渉や契約書を交わすし辛い空気があることに問題を感じる。

・オンラインマッチングプラットフォームの提供するキッズラインの法務担当者。

保育、家事代行、家庭教師のサポート会社で、ユーザー数、195,000人

ユーザー(保育など受ける人 ) と サポーター(保育などを提供する人) の間の契約代行。
決算はそれぞれ手数料10%(ユーザーの短期契約は20%)

これらの契約はオンライン上のプラットフォームで簡潔に行うことが出来る。

また、
トラブルが発生した際の詳細な解決法(違約金の発生など)を提示、トラブルの即時解決に務める。

目的が、フリーランスの人が安全に働けること、
ユーザーが安心してサービスを受けられることと、明快である。

++

以上の事例を報告を受けた後、少人数グループに分かれての
『フリーランスの働き方は契約に関するアイデアソン』スタート。

ボクは、前出のデザイナーさん、ウエッブデザイナーさん(ウーバー経験者)、画家(イラストレーションの依頼も受ける)のお三方とブレスト。

○アイデアソンを簡単に説明。

・間違っていてもいいから思いつくアイデアを出せるだけ出す。

・その中から優先されるものを選び、それに対してさらにアイデアを出し合う。

・持論に固執することなく、相手の言い負かすことを目的にしない。

・完成形の答えを求めず、しかし、みんなで向かってゆける問題解決のターゲットを共有する。

これは自分がずっと続けてきた現場の作り方で、イラストレーターズ協会には徐々に投下中。

イラストレーターの人数だけある働き方の問題を解決するために、
持論を通す決定方法は多様性に対応できず。
まずは個人事業主であるイラストレーター1人ひとりが並列で置かれた場所で、
それぞれの問題がオープンいシェアされる状況を作らねば、だな〜。

逆説的な話になるけど、オープンな意見交換を目指したミーティングの後、
参加者から個別に意見メールを受けることがあるけど、
それが解に繋がることは無いのだよね。

で、自分が参加したチームは、

『フリーランスの仕事と契約のあり方の矛盾の解消』みたいテーマを選択。

ファシリテーターの原 亮さんのミーティングの「設計」と「進行」が素晴らしく、
参加者みなさんオープンに言葉を発し、仕事の契約上の大量の問題を一気に共有出来ました。

その中でみなさんが一番うなずた印象の「ギャラや契約について語りづらい状況がある」
ということに対し、解決に至るアイデアをさらに出し合いました。

結果、

『未来の理想的な仕事のあり方』などというワードが飛び出し、

・「発注」「受注」が縦関係に見えるのを、なんとか同じフィールドに並列させて置く。

・「報酬」は「対価」であるという考えの周知。

などという必要が語られる。

が、
そういうことこそ「仕事をくれる」人に言いづらいなあ~~、、

ならば発想は飛躍。

業種を超えたフリーランスが集い問題共有出来るプラットフォームを構築し、
「フリーランスから見た理想の仕事」をフリーランスが褒める
『こんな仕事創ってくれてありがとう!大賞』を創設。

年1でクライアントやその仕事にまつわる人たちを表彰するとともに、
毎年フリーランスの仕事のあり方を検証する機会にする。

パワーワードとしては、

『フリーランスが向上させる企業イメージ』なんて壮大なところまで行き着きました。

目指すのは、フリーランスで働く者とクライアントと1案件の関係性で終わるで無く、
「その仕事を持続可能なものとすること」も作業に内包させたパートナーとして、
未来方向に共に走ってゆくこと。

そんな仕事のあり方が構築出来たら、お互い契約の話をするのも当たり前になるだろう。
実現には時間かかるかもしれないけど、実現したらいいな。

ちなみに、
連合はウエッブ上で展開しているフリーランスの問題解決プラットフォーム
Wor-Q (ワーク)を展開していますのでのぞいてみてください。
https://jtuc-network-support.com

で、他の3チームは、

・契約の前に約款を置くことで、小額のギャランティの仕事の権利を守る。

「約款」とは、たとえばホテルに泊まる時もオンラインでなにか購入する際も、
問題が起きた場合の解決の基準となるルール。

こうしたものを、オンライン上で「使えるもの」にするアイデア。


・フリーランスで働く人の諸問題に対し、AIを活用した問題解決を図るスステム構築。

これは若い学生さんグループが提案。若くてキレッキレのみな、楽しみだ~

・契約のカジュアル化。

紙やハンコを使わず、オンライン上で素早くアプローチ出来、管理はAIが行う。

こうしたことのいくつかは東京イラストレーターズ・ソサエティでも実装をするべきではないかと。

今後もこの企画は今後「ハッカソン」「とりまとめのミーティング」「発表会」と続くので、
自分も責任ある立場として脳みそ揉みほぐしに出来るだけ参加してみるつもり。

こんな取り組みを重ね、みんなの働く足場を固めた上で、
みんな自由でクリエイティブなかっちょ良い生き方出来たらいいよね〜!

ともかく、フリーランスの働き方に対しこんな動きが生まれてきたのは、良かった。
実は30年前にやっておくべきことだとうイメージなのだが、、