サタデー イン ザ パーク


土曜日の午後、代々木公園を走る

1.7kmのコースを土曜日の午後のボクのペースを崩さずに

代々木公園からはさまざまな音楽が聴こえてくる

コドモたちがサッカーのボールを蹴る音
「こっち!こっち!」とボールを要求する声

初秋の気まぐれな風が公園の木々の枝葉を揺らす音

トロンボーンの練習をする友人との挨拶の声

「つまらないかも?」と心のどこかで思いながらなのか
自作の唄を煮え切らぬ声でギターに乗せてうたう男の子

大げさな抑揚で“ネタ”の確認をしている
お笑い芸人の若き2人の声

ボクを抜き去るナイキのウエアを着たランナーの一群
その靴音

チューしているカップルが
照れ隠しのようにして笑う低い声

その頭の上でエサをみつけたカラスが
甲高い声で鳴く

ホームレスのオッチャンがひと言ナニか叫ぶ

ボクが抜こうとしている後ろ姿のキレイな女性の
ポケットの小銭がたてる金属音

雅楽を踊り付きで演奏する若い一群がいる

代々木の森の奥から聴こえてくる
フィドルが奏でるアイリッシュ

さらに奥からレゲエのリズム

噴水があがり
その水滴が池の水面を叩く音

ハモネプに出るのかな?
ツルッとした顔の男の子と女の子
7名の声が合わさった唄

BMXのタイヤがアスファルトに擦れ「シャー」と音をたてる

リーゼントに皮パンの一群がツイストするロケンロー

フリスビーに食いつこうとする子犬の
芝生を蹴る小気味良い足音

キャッチの瞬間の歓声

ジャンベを叩いている3人の男

タップダンス

「アメンボアカイナアイウエオ」

道を挟んだ向うでは
北海道フェアが多くの人を集めていて
地元出身のフォークシンガーが
チャゲアスをカバーして唄っているのが聴こえる

2010年10月2日午後の代々木公園は
無垢で美しい音楽に溢れている

そして
そこに溢れているどんな音楽よりも
この場所を支配しているのが
沖縄の遥か沖に位置する小さな島々を巡る2つの国の主張の食い違いに対し
一方の国から他方の国に対する主張を訴えるデモ行進の勇ましい音

ボクは1.7kmのコースの2周目から3周目にさしかかっている

ボクはその主張に同意している

しかし
2600名が集まったという行進が響かせる勇ましく威圧的でもある音に
恐怖を感じたんだ

さらにランニングの周回を重ねる中で聴こ続ける
公園で自由を過ごす人々の奏でる音楽が
デモ行進のシュプレヒコールの怒声に掻き消される

土曜日の公園に集う人々は
そんな音は聴こえていないかのようにして
自由で無垢なままの音楽を奏で続けている

そんな景色にさらに恐怖が深まったんだ

「ボクたちは知らぬ間に、戦争をする国の一員になってしまうのではないか?」
 (実は今はもう戦争状態なのかもしれないが、、)

未曾有のデフレ不況の中で
出口を見つけられぬ人ばかりの日本

それと
10月の土曜日の「幸せなイメージ」に溢れた代々木公園ののどかさ

その圧倒的なコントラストの景色の中
それを見ようとする人には
頭の上に広がる空の豊かさを感じるだろう

しかし
うっかりすると足元に濃く写し出された影ばかりを
目で追うことにエネルギーを注いでしまうんだ

圧倒的なコントラストが造り出す景色は
実はモロい構造物でもあり

それはちょっとしたキッカケで
簡単に崩れてしまうのではないかな?

海の向うの国でも
相手の国を威圧的になじるデモ行進が行われ
液晶画面の中を声高に通り過ぎていた

ボクは「こんちくしょー」と思いながら

でもひと呼吸
改めて液晶画面の中で“主張”をしている人々の顔を見ると
その顔つきがボクにとっては魅力的で無いものだと知る
醜くさえあると思う

そしてそれはボクたちに突きつけられた
合わせ鏡であるのだと思った

ボクはそんな醜さを知る術を
優れた音楽や絵画と出会うヨロコビの中から身につけてきた
自分の足で歩いたり走ったりすることで
確信と成り得るよう鍛え上げてきた

だから
こんな顔つきして勇ましいコトバをまき散らしたって
世界が良い方に向かうなんてコト無いって知っている

島の領有権を決するには
「穏便に」なんてノンビリしたコトでは解決しないんだ
きっとね

しかし
「2010年の10月の土曜日が“あの”戦争の引き金になった」
なんてことにならぬよう

ボクたちは勇ましいコトを叫ぶ前に
一発の銃声で始まってしまった人類の過去の過ちを見つめ
今の自分がどんな顔つきをしているのかを見つめ
自身の小ささや醜さにさえ見つめ続けなければならないんだと思う

それを助けたり癒したりするのが
音楽であったり絵であったりすれば良いなと願う

そんな音楽が土曜日の公園の自由の中から生まれれば良いなと願う

少なくとも
土曜日の公園でコドモたちがボールを蹴る自由の音が
日本という国から奪われぬよう

そう心で静かに願うことだって
ちょっとした勇気がいるんだぜ

ボクはさらに耳を澄まし
土曜日の公園の名も無い小さな音楽と
自分の走るペースとをシンクロさせ

もう1周走って

家に帰った

2010
1002
PEACE!!

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