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今日は2011年3月11日から4,263日
609週
11年8ヶ月
140回めの11日です。
10月31日から11月4日まで、
宮城県塩竈市の塩釜水産物仲卸市場の北側の扉への壁画制作を行いました。
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震災の津波被害の遭った場所で、長年稼働してきた仲卸市場ですが、
老朽化と世代交代のタイミングで、若手と呼ばれる人たちがこの場所の更新を担うことに。
これまで4つに別れていた運営をグループを1つにまとめ、
課題解決に向けたコミュニケーションのよりオープン化させ、
新たな試みも加えて、10月15日にリニューアルオープンさせた場所。
ボクが懇意にさせてもらっている塩釜のアートシーンの中心人物 高田彩さんが、
この春ここの南口に作家さんと地元の若者たちを結びつけた壁画制作をしていることを知り、
とても良い試みだな〜などと思っていたところ、
次年度予算で北側の入り口にボクを呼び込んでくれました。
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その際にオーダーがあったのが、
ボクが過去に同じ構図で2度描いた塩釜の海、「千賀の浦」を飛ぶ鳥たちの絵、
それをこの場所に施してもらいたいとのこと。
ああ、うれしいな〜。
この絵は、ボクが2013年の5月に塩釜で見た風景です。
この年の1月、ボクは震災後の何度めかのフィールドワークで東北を巡り、
旅先で見た「マリンゲートという港の機能が一部再開」のニュースから塩釜に行ってみようと思いました。
そこにはプレハブ建ての復興市場があって、
ボクは共栄丸水産で働く水間さわ子さんと出会います。
とても溌剌としていて気持ちよくて、自分では嫌だなと思っていた
「逆に被災者に元気もらっちゃいました」みたいなことが起きてしまったのです。
そこでラブラブだというご主人を紹介され、
ボクは手持ちのシロツメクサを描いたポストカードを手渡し、
東京にもどりました。
しばらくするとさわ子さんから手紙が届きます。
そこには、保育士となった二十歳の時、不安な気持ちで通学バスに乗る際、足元に咲いたシロツメクサを見て、なんだか励まされたような気持ちになったこと。
震災の直後、何もかも流されてしまった養殖場ある海に出て呆然と空を見上げていると、呑気に飛んでるカモメ(ウミネコか?)の姿が見えて、やはりなんだか大丈夫と思えたこと。
そして、ご自身の今のことと相変わらずラブラブなご主人自慢。そんな自慢のご主人が働く海と5月に塩竈神社に咲く塩竈桜を見に来て、いつか絵にしてくれと。
ボクは彼女と会えたことで、被災ということ、復興の意味、もしくは、被災地と呼ばれる場所にひとりでも友人が出来たら、それはとても豊かなことなんじゃないかという直感を得ました。
で5月、東京から弾き飛ばされるようにして向かった塩釜。
復興市場でさわ子さんを見つけ「ご主人の仕事場を見てくるね〜!」と声かかけて、遊覧船に乗って松島湾へ。
古くは「千賀の浦」と呼ばれた場所で、ボクはかっぱえびせんに群がるウミネコを見ます。
被災と日常が千賀の浦の上で交わって感じられた瞬間。
ボクはこれを描き続ければいいのだろうと確信しました。
彼女はその絵をとても喜んでくれて、
この絵を使ってご家族で営む共栄丸だけでなく、塩竈の復興に役立てたいと考えを持ってくれました。
いくつか具体的なアイデアもあったのですが、
2018年の夏、彼女は急逝してしまいます。
家族のため、地域のためと、ものすごい笑顔と共に頑張っていたんだよね。
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今回の壁画制作にあたり、
高田綾さんに共栄丸さんにご挨拶に行きたい旨を伝えたら、
一緒にゆきましょうと。
美人すぎる元気すぎる共栄丸シスターズの洗礼を受けていましたね。
コロナでしばらく来れなかった塩釜で、ボクもお互いの元気を確かめ合い、
さわ子さんが愛してくれた絵を、いわばライバルと言えるような場所に投下する旨を伝えたら、
逆に喜んでくれて快諾をいただきました。
ああ、こういうマインドなんだよね〜、今日本中で必要とされていることは。
(オリンピックの金の流れとか見ちゃうと、特に、、)
で、シスターズ、
「お父さんがアミイゴさんの影響で絵を描き始めちゃって、」なんて言って見せてくれた絵。
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きゃーー!
素晴らしい。
お父さん、俺にはこんなん描けないです。
海を愛し海に生きた人だからこそ描けるリアリズム。
近年見た絵の中で一番愛しいかも。
そして、自分がやってきたことでこんな絵が生まれたことに感謝。
都会のなにやら立派な場所で輝くものでは無い、
自分のアートとは、こんな絵が生まれることなんだと、
またまた塩釜で教えられてしまったのです。
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共栄丸さん、いつまでも元気で!
また塩釜で会いましょう。
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仲卸市場での壁画制作は、
主に市場の閉まる13時から日のかげる16時半くらいの3時間半が勝負。
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それまでは扉が開いていて、少なからずの方がここを通ります。
そんなお一人お一人が気持ち良い言葉をボクにかけてくれて、
この作業が行われることに関して、市場で働く多くの人のコンセンサスが取られている事を感じます。
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ボクがここで制作することで生まれるコミュニケーションも、
こな市場を再生して行く上での重要な要素なんだと思います。
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「被災地」と呼ばれる場所で生きる人の多くは、
あの日からずっと考えるのやめなかった人。
(あらゆる事情で考えることを足踏みする人のことへの想像も忘れずに、)
個人的には東京の(中央の)発想のずっと先を走っているイメージさえあります。
そんな方々が大切にされていることのほとんどは、
風通しの良いコミュニケーションの現場作りではないかと。
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若いアイデアが結集され生まれた市場内のフードコートの風通しの良さは、
コンサルタントや代理店の発想では生まれ得ない気持ちよさがあります。
現状はリニューアル・ブーストがかかった状態で、多くのお客様が足を運んでいる状況かと思い、
これを維持してゆくのは大変さも想像出来てしまうのだけど、
だからこそ高田 彩さんはこのタイミングでボクを呼び込んでくれたんだよね。きっと。
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いやー、この壁の前でほんと色々な人と会話をしたな〜
その1つ1つが愛しくて仕方ねえぜ、塩竈、宮城、三陸、東日本。
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大切な友人も駆けつけてくれたし、ここで友人になれた人もいるし、
さわ子さんとのご家族とは「今でもその辺にさわちゃんがいるよね」と。
この壁がある限り、そして少なくとも自分が生きている限り、
これからも続いてゆくものばかりです。
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塩釜を良い方に更新しようと奮闘するみなさん。
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そこでアートを翼に軽やかに舞う高田 彩さん。
この場所への導きをありがとう。
綾さんが運営するアートの拠点「ビルド・フルーガス」は、
エスペラント語で「ほら、鳥が飛んでいる…」という意味だそうです。
あらためて、
2011年の春に千賀の浦でさわ子さんが見上げた空を想い、
塩釜で出会った人たちに感謝を深めた壁画制作。
この空、東京へ、日本中へ、世界へと広げてゆきたいです。