恐怖の大王

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「小説現代」4月号で久保寺健彦さんの短編に絵を添えました。

タイトルの「恐怖の大王」はある年齢から上の方なら
身震いするような言葉ですね。
小学5年だったボクも「ノストラダムスの大予言」に出会った瞬間は戦々恐々としました。

曰く「1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう」みたいな。

“東西冷戦の時代”1973年

オイルショックでスーパーからトイレットペーパーが消えたのもこの頃。
狂乱物価や公害、過疎や都会の孤独などなど、
高度経済成長がもたらす歪みが社会に溢れ、
ボクらはこのまま走り続けるのか、それとも一息つくべきなのか?
そんな不安定な時代です。

世界には地球を7回滅ぼすだけの核兵器があり、
アメリカはベトナム戦争が間違いだったことをやっと認め始め、
ソ連ではパン買うための庶民の長い行列が毎日作られ、
雨の日にばあちゃんは
「放射能が降ってハゲるから帽子をかぶれ」とボクを脅しました。

今思うと、
ボクらのまわりには太平洋戦争の記憶も、次の世界大戦に突入する恐怖も、
ごっちゃ混ぜになって存在していました。

ボクたちはオトナになっても「愛」とか「恋」とか言ってられるのだろか?

そんな時に「空から恐怖の大王」

「恐怖の大王とは?」
「水爆?」
「いや、公害だろう」
「宇宙人の襲来に決まっている!」

やはりクラスは戦々恐々です。

ただまあ、その頃のボクと言えばそれは色々ありまして、
スベテのことにシニカルな態度で接するライ麦畑の住人の生意気な小学五年生。

五島勉さんの「ノストラダムスの大予言」も途中からはスベテ下ネタとして読み解き、
「“のせたらダマす”の恐怖の大王とは、○子のションベンが空から降ってくるのだぁ〜〜」とか言ってね、
クラスの信者との断絶を確かなものにしてゆきました。

「だってそう考えた方が未来は楽しいじゃん!」
てかいい加減なんです。

しかし、その恐怖に縛られたままの“真面目”な人たちが存在するであろうこと、
いつも心に引っかかっていました。

それは「恐怖の大王」のせいだけではありません。
それは人間が現実に造り上げた“冷戦”だったり“高度経済成長による人間破壊”だったり、
“今そこにある恐怖”が生み出す未来への絶望こそが、
“真面目”な人たちの心を締め上げ、そこに「恐怖の大王」が呪文をかけた、
そんなだったと思います。

この日記を書き始めた時、
地下鉄で起こされた忌々しい事件から14年目を報じるニュースと出会いました。

1973年の絶望が1995年の幼稚な発想からもたらされた凶行の引き金であった
だろうこと、
ボクらはそれに「関係ない」はずもなく、
傍観という「当事者」に祭り上げられてしまっている嫌な気持ちを引きずったまま今に至っています。

今回、この作品に出会い挿絵を描くにあたって、
36年目の「恐怖の大王」をやっつけてやろうと思いました。

主人公はやはり小学5年生のボクとキミ(時はもう数年先ですが)、
そして1999に再会したボクとキミ。

ボクはとても弱くしかしタフな小学5年生の彼女に
キッチリ恋をすることでエネルギーを生み、
ボクの心の中にもモヤモヤとして生き続ける「恐怖の大王」にケリをつける、
そんな裏テーマの絵にしました。

そして、
この小説とは直接関係無いかもしれませんが、
14年前地下鉄で命を奪われた方々のご冥福をこれからも祈り続けようと思います。

以下、最近描いた仕事をいくつか。

4gatub
両端のランナーは円谷さん、宇佐見さん。
真ん中はギネス記録“52日連続フルマラソン挑戦”の楠田さん。

monkyb
ベネッセの仕事からサル。
手のカタチがMonkyの“M”ね!

そして
kappab
カッパ。

いい加減とは生きる武器であるんよね。

コメント / トラックバック 2 件

  1. miyuki より:

    この前はコメントへのお返事ありがとうございました。
    励まされたような気がして、早速絵を描いてみましたが、
    自分は全く絵を描くことを楽しんでいなかったなあと
    気がつきました。
    しかし、イラストレーターさんというのは縦横無尽に自分の
    才能を筆や絵の具を使って、自己表現をしているんだと
    思っていたのですが、こんなにも深く考えて表現しているのかー
    と考えさせられた次第です。生意気なようですが、
    本当に、これからも素敵な絵を見せていただけたらなあと
    思いました。ありがとうございました。

  2. >miyukiさん。
    いやいや、、
    こんな七面倒臭い意味付けしてる人はあんま居ないはずですよ、、

    ホント、一々こんな考えに至ってからイラストレーションを構築してたら
    商売にならんはずです。

    でも、ボクはソレが必要なタイプで、
    仕事量は多いけど経済的には永遠の低空飛行であります。。

    まあ、好きでやってることであり、
    幸せもんでhああるんでしょうがね。

    そんなことより、
    まずは1本「エイ、ヤー!」気持ちよい線を引けば、
    かなり幸せハッピーですよね!!

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