35ヶ月め

豊間2013夏
今日は2011年3月11日から2年11ヶ月
1068日め
35回目の11日です。

先日開催した個展では
2年前、2012年3月11日を挟んだ期間に開催した個展に出品した作品と同じモチーフ、
福島県いわき市豊間の海岸を描きました。

2年前の作品はボクの想像を超えたところで、
多くの方からご支持を頂きました。
001 のコピー

その制作はとても衝動的なもの。

震災後3ヶ月で足を運んだ豊間で、
瓦礫の街を背にして発見した圧倒的な美しさ。

その発見は2ヶ月後にボクを同じ場所に立たせていました。

その時出会ったカモメたちの姿が
ノホホンとしてはいるけれ
しなやかに逞しいものに思えたので、

気持ちは混乱の中にあったけれど、
闇雲に腕を動かして生まれた絵。

2年前の個展では、
そんな風にして生まれた作品群を前に
多くの方が1年前に閉じ込めてしまった感情を解放し、
こぼれ出すようにして言葉にしてくれた風景に出会いました。

絵にはそんな力があるんだって発見。

しかし自分は何を見て何を感じたのか?

その後も時間の許す範囲で東日本を巡り、
自分が感じたものを言語化するのが、
次のステップである今回の個展であったようです。

前回の個展ではスッと描いてしまった東日本の美しい風景も、
その後の旅先で地元の方とのコミュニケーションが密になるにつけ、
絵にしてしまうことのプレッシャーも大きくなり、

今回は1点1点絞り出すように、もしくは、削り出すようにして、
かなり苦しんで絵にしたはずです。
松島小
一見さわやかに見える絵でも、
自分と絵との、自分と自分との永遠のような言葉の交換、
ていうか、言葉のどつき合い。

「このモチーフを絵にすればみんなに喜んでもらえる」
そんな確信はあっても、
しかし、それをカタチにするために、
どこを通ってどこにたどり着けばいいのかは分からず、
ともかく手を動かし、
今までの『洋画風色彩で描けたら成功』みたいなマインドに対して、
「アミイゴ、バカ!カッコつけてんじゃねーぞ!コラー!!」とか
「地元で美味しいワカメを育てて500円で売ってるの人たちに申し訳ないぞ!」
みたいな自分への罵倒を繰り返し、
1度描いたものを消して、潰して、塗り重ねているうち、
最後にポロリと小さな言葉がこぼれ落ちる感じ。
そこで完成。

そのこぼれ落ちた言葉は、
「海の光がキレイだった」みたいな、
小学生のつぶやいたようなシンプルなもの。

なんだ?それだけ、って感じ。

しかし、
前回の展覧会では御客様の言葉の聞き役に徹していたボクは、
今回の展覧会では、自分で描いた絵がの背景にあるシンプルな言葉を頼りに、
スムースな会話が生まれたように思います。

2年前に描いた豊間の海岸は「砂浜にカモメ」の絵だけれど、
衝動に任せて、空も海も風も波も、
向こうの山並みも手前の砂浜もカモメたちもなんもかんも描いたはず。

それに対して今回描いた豊間の海岸で描いたものは「空気」

それが上手くいったてるかどうかわからないけど、
震災直後にボクが出合った海岸で感じたのは
そこを支配している圧倒的な「空気」だったんだなと。

海の水は多くを流してしまったし、
原発は恐怖をまき散らしたままだし、
しかし、そこには「空気」という圧倒的な存在があり、
その風としての流れは、
少なくともボクの恐怖心を吹き飛ばしてくれたような、
もしくは、圧倒的な孤独を感じさせてくれたような。

「空気」というシンプルな言葉を足場に、
発想を自由に会話を膨らませられた。

そうすることでやっと、
3年かかって自分の感情の輪郭に触れられたような実感。

面倒くさいけれど、この作業は間違っていなかったんだっていう、
ボクとお客様一人ヒトリとの間に生まれた豊かな言葉の交換。

ここからさらに1人ひとりとのコミュニケーションを深めてゆかねばだなあ〜

これは、ギャラリーという特殊な現場で行われたことだけど、
しかし、実社会でも応用の利くことなんだと思いました。

3月11日にボクたちが
「これはじっくり時間をかけて続けてゆかなければならない」と直感したことに対し、
復興の本質とは別のところで、
忙しく世の中のあり方を変えてしまおうという思惑が押し寄せてきたり、
「その話しはやめにしておこう」というマインドが染み出してきたりを感じる今。

あらためてシンプルな言葉を頼りに、
さらに聴く耳を研ぎすまし、
人と人とのコミュニケーションを創造してゆくことは、
ボクのような立場にあるものの使命なんだと思います。

あの日から来月の11日で3年。

ボクたちはまだまだコミュニケーションの1歩目あたりでウロウロしているような、
しかし、時間がかかったけれど、ボクは1歩踏み出せた実感を得られたということ、
毎月11日の備忘録に記してみました。

そして、
空気を切り裂き飛び立ったカモメたちの、
その後の姿を追い続けてゆかねばならない。

そんな決意の確認でもあります。

コメント / トラックバック 2 件

  1. vivia より:

     

    だからあのカモメたちはみなおなじ方向を向いていたし、
    色彩は
    海の泡つぶみたいにうつくしいんですね.・*・:゚

    言葉として意識にのぼってきていなくても、
    アミイゴさんの作品をまえに
    沢山の想いを両手にする事が出来ましたよ。

    良い絵です。

    LOVE∞vivia

  2. 小池アミイゴ より:

    >viviaさん。
    そうだね〜、ボクが絵でどうするか以前に、
    カモメはすぐに飛び立てるよう、たえず風上に顔を向けているように感じたよ。

    ボクはその場所で感じた何かに向かい、
    カモメや波粒などを丁寧にトレースしようと思うのだけど、
    自分の中にあるつまらない欲が、どうしてもカッコつけようとしてね。
    そんなんをイッコイッコ潰して、最後にシンプルな言葉をポンと。

    そうして出来上がった作品は、
    それを見る人にとっては、合わせ鏡のようになるのかもね。

    viviaさんが感じた思いは、
    そのままviviaさんの中にあったものだと思うぜ。

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