10年、

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昨日で今年のcafe week が終りました。

今年もどれだけの憎たらしいくらいステキ過ぎる出会いがあったかね?
どーにもこーにも妬けますね。

福岡で生まれたムーブメントcafe week のお手伝いは2004年の3回目から。

毎回腱鞘炎になりそうなくらいのメールとひっきりなしな携帯で会話、会話。

東京と福岡の物理的距離を埋め、
顔の見える関係になるまでともかくコミュニケート。

そうやって作った信頼関係を足がかりに、
唄を届けるフリして“人たらし”な恋の旅。

去年は広がり過ぎたcafe weekのフォローで東に西に駆け巡り、
流石にちょっと頑張り過ぎだぞと、今年は東でやるべきことを全う。
結果「静観」です。

そんな静観の中にあっても、
今年のcafe week book の第2テーマ「好きなカフェ・好きな場所」に
文章を寄せさせてもらい、ここに再掲載しときます。

来年10周年を迎えるcafe week 。
その前に10年前に失ったカフェについて書いておこうと思いました。

うっかりしていたら、
いや、うっかりしていなくても、
当たり前に失ってしまうものばかりだから、
さて今日は何をしとこうかね。

そんな気持ちです。

24-25
『セツ ブレンド』

午前11時
「ガガガガ ガ ガー」とミルの働く音が聞える

午前11時15分 
鳴らされる鐘の音
3階のアトリエまで登ってきた珈琲の匂い

季節は5月にしておく

ボクらはヤセッポチのモデルから視線を外し
親指と人差し指と中指の間で火照った鉛筆を置く

2階のロビーへ

人とすれ違うのがやっとの階段は西側にあり
ポプラの樹が演出する木漏れ日が差し込むのは
午後1時を過ぎてから
今はまだ初夏の朝の冷ややかさの中にある

階段は最後の4歩分右に曲がり
その先には珈琲に並ぶ人たちの姿が見える

デッサンの合間に置かれた30分のコーヒーブレイク

コーヒー 100円
カフェオレ 100円

その隣りには

「下品な缶コーヒーはセツに持ち込まないでください」

と書かれた張り紙が貼ってある

セツモードセミナーの通称“セツブレンド”

長沢節が「コレ」って指定したブレンド
長沢節が「コレ」って指定した深めの焙煎

両手の平で包んで余るくらい大振りのミル
30センチの高さのホーローのポットに移されたお湯
手鍋イッパイに温められたミルク

白髪のH先生の淹れた一杯がボクのお気に入り

バイトちゃんの落としたヤツは不味くて呑めたもんじゃない

珈琲は人なんだと知る

ロビーは吹き抜けのギャラリーになっていて
大きくL字にとられた2階の手すりはヒザほどの高さであり
そこに座って足を投げ出すのがセクシーに美しいと
それは長沢節の目論み

ボクらはそんなワルダクミとは関係無く
ヒトリとヒトリの心地よい距離を保ちながら珈琲を呑む

中庭にはザクッと植えられた草花が野花のような顔をして
どっかからか降ってきた初夏の日差しに揺れている

その影だか光だかは壁の白さに揺らめいて
ボクらは揺らめいた孤独に光を投げる

その輝きに目を細めてそして
珈琲をもうひとくち

揺らめいていたヒトリヒトリの孤独は確かな像を結び
ボクらはその孤独を好ましいものとして受け入れる

孤独であるから
もう1つの孤独と一杯の珈琲を求めることを知る

永遠のように思えた30分は30分のまま
再び鳴らされた鐘の音にかき消され
ボクらはさっきよりちょっと孤独になって
ヤセッポチなモデルの前に立ち
再びそのヤセッポチな線を追った

「弱いから好き」

1999年6月
長沢節はボクらにそんな言葉を残して逝く

ボクらはそんな言葉と引き替えに100円のセツブレンドを失った

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