香港イラストクリエイティブショー7レポート


5月4~5日は東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)のブース「日本美術館」の運営のため、
香港イラストクリエイティブショー7“(HKICS)の現場に立ちました。

前回まで九龍のコンベンションセンターで開催され、出店者やファンを拡大してきたHKICSですが、今回から香港最大のコンベンションセンター”香港会議展覧中心(Hong Kong Convention and Exhibition Centre)”に会場を移しての開催。
自分としては前回昨年11月に開催された第6回目に次ぐ2度目の現場です。

初日香港国際空港に着くとなかなかの強風を伴う土砂降り。
しかし、会場までまったく濡れることなく着けるのは、流石に高度にインフラ整備された香港。

(2日、香港会議展覧中心を対岸の九龍より望む)

主催はシリウスさんとエリスさん。

右がシリウスさんで、企画運営の統括をされています。
香港でITベンチャーを立ち上げ、現在は東京と香港での2拠点生活中。日本のイラストレーションに対して絶大なリスペクトを注いでくれる方です。

写真左の女性がエリスさんで、クリエイティブディレクターの役割を担いっています。
韓国でクリエイターと関わる仕事が長かったとのこと、香港語と英語とハングル、そして日本語も少し話せるマルチリンガルです。

HKICSは日本ではデザインフェスタに当たるコンベンションです。

TISは第4回目から「招待」して頂いています。

第4回参加時の記事
第5回参加時の記事
第6回参加時の記事

そうして回を重ねる中、今回シリウスさんからの要望は「グッズ販売」をメインにやってみないかというもの。
それに対して一度「kawaii」に振り切ったグッズ展開を出来ないだろうかと考えた今回です。

それは前回現場に立ち合い香港の方々と向き合って実感した、日本の「kawaii」の”世界共通語感”。
さらには、多くのお客様が「kawaii」だけでなく「yasashii (やさしい)」と発語し、日本のイラストレーターの作品に触れている姿に出会ったから。

デザインフェスタのようなコンベンションに、プロのイラストレーターの団体であるTISが参加することは、日本では発想されていなかったはずですが、このチャンスに突き詰めて検証する日本のイラストレーションというものがあるのではないかとと考えたのです。

そこで、壁面にはTISが主催するイラストレーションのコンペ「第18回TIS公募」での入選・入賞作で構成。
その手前に”TOKYO kawaii グッズ販売”のコーナーを設ける展示構成を考えました。

結果、12時のスタートを待たずに人が、、

初日は笑っちゃうくらい暴風雨の香港なのだが。

!奥と右の展示に段差があるのは、右の壁面が額の重さで落ちてしまったため、、

12時のオープンから19時の閉場時間まで、お客様の波が延々と続きました。

今回主催者から「壁面の展示は8点ほど、グッズは40種類くらいでお願いします」と言われていたのだけど、実際に集まった展示作品もグッズもその4倍ほど。主催者からの「減らせないか」との要望に対し、直感的に「全部受け入れてくれ」とお願いしました。

その直感は正解だったのですが、壁面構成などかなり苦心して考えてくれたことがわかり、ただただ「ありがとー!」


中華圏の展示は、原画にこだわることなくデーター出力でガンガン展開してしまうのがデフォルトです。
そんな中、公募受賞作品は額装で、入選作品は額的なデザインを施した見せ方というのを考えてくれました。


そして、TOKYO kawaii をアイコニックに感じてもらうために欠かせないのが、春からTISの理事長を務めて下さるサイトウユウスケさんのオリジナルキャラクター”チャック

これで万全!
のはずなんだが、初日の朝にグッズを開封したら、その物量に流石に途方にくれた自分です。

手前に100%ORANGEさんのグッズ。
そこから商品を流してゆき、締めの部分は壁面との関係でサイトウさんのグッズ。
その流れの真ん中にあえて『ド派手な大阪コーナー』いぬんこさんとタダユキヒロさんを中心に構成。
別テーブルにポストカードを展開。までは発スムースに想出来たが、そこからフリーズ。

そんな現場に救世主現る。

主催者が用意してくれた3名の販売スタッフ。
みなさん信じられないくらい真摯に取り組んでくれるのですが、その中でもひとり大天才が。

自分のようなイラストレーターに対する忖度は無しで、今のここにあると良いなと思えるグッズを選ぶと、適切なな位置におく。それを絶えず繰り返しお客様の求める「kawii」に対応させてゆく。zineなどは「このページ見て!」という感じで開いて見せるから、お客様も手を出しやすい。ものすごい種類のポストカードは、あえてランダムに並べて置いて、お客様がそこから掘り出し「わたしだけのkawaii」を見つける楽しさを演出。

なので、二日間ずっと販売スペースがキラキラ輝いて見えるんよ。


実は初日のかなり早い段階で目立つタイプのグッズや書籍が売れてしまって、2日目までもつのか心配したのだけど、そんなことない。東京から運んだグッズは全てキラキラ輝いていました。

なるほど、イラストレーションの周辺にはこういう人の存在が必要なんだね。
日本ではどうしても腕を組んで「お手並み拝見」みたいな態度の人が目についてしまうのだが、まだまだやるべきことはあるなあ〜。

以下、二日間通して象徴的だったトピックなど。

「kawii」を演出した今回ですが、エッジの立ったもの、いわゆる「アート」で語られるタイプのものもしっかり売れました。

この中ではぱっと見渋く見えてしまう濱愛子さんの画集もSOLD OUT!!
軽くガッツポーズっす。

「kawaii」と「edgy」が共存しダークなトウキョウをポジティブに見せる藤岡詩織さんの作風も、
「日本らしさ」として好まれた印象です。

タダさんのグッズだったり、

佐藤邦雄さんのグッズだったりに「kawaii」を発語して喜ぶ香港ピーポー。
大阪と香港、何かありうそうだ。

そして、本来の「kawaii」の語源である日本由来のアニメやコミックは世界言語になっているが、若干その鮮度が失われているのではと思えた、TISの作家さんの作品に向けられた新鮮な視線。
もちろんすべての作家さんがまんべんなく売れたとは言えず。しかし、すべての作家さんに可能性を感じた「kawaii」が更新された現場だと思いました。

壁面ではさらに面白い現象がありました。

アサバさんの作品は、今回の日本のイラストレーションを象徴するような存在として、多くの方が興味を持って見ていました。彼女の絵から視線が周りの絵に移動し、そして自分の「推し」を選ぶような。ある意味イラストレーションらしい絵の楽しみ方をしてもらえたはずです。

ということは、公募で彼女の作品に大賞を与えたTIS、ちょっとすごいぜと思ったのでした。

そして、自分に対して一番質問の多かったのは、
「くまじんさんのこの絵が買えるのか?」
「この絵のポストカードは無いのか?」
「この人のアイジー(インスタ)を教てくれ」
というものでした。

なんだろう?香港。
高層ビルが立ち並ぶ巨大な金融都市にあって、若い人たちは何を考える?

去年自分が自分の絵本を販売した際も、「やさしい」という言葉と共に「手で描いているのか?」という驚き顔の質問が多かったのだけど、その部分でアジア圏で語り合えることはありそうだ。

くまじんさんのこの絵は、とても象徴的な物語として今回のHKICSの記憶となったけど、他の絵全てが日本とは違った価値観でしっかり見てもらえたことは間違い無く。今後の日本のイラストレーターの活動のあり方を考える良い機会を得たんだと実感しました。

日本のイラストレーションにはまだまだ全く手がつけられていない可能性がある。
です。

その他、

韓国と台湾、それぞれでアジア最大規模のコンベンションを主催するオーガナイザーを紹介され、どちらからも「なぜ御会は韓国に来ない?」「なぜ台湾のコンベンションに参加しない?」みたいな質問をうけたり、「なぜ日本ではなく、東京のイラストレーターの協会を名乗るのか?」と質問。

う〜〜ん、と考え、
「まず、日本のイラストレーターは、イラストレーター1人ひとりがパワフルであることを目指していて、それを束ねる協会が主役になることは無く、会としての他国でのブース展開という発想にならないのだろう」

そして、
「TISは、過去にレジェンダリーなイラストレーターが集い結成された作家団体だったが、それは東京の街、特に渋谷、原宿、神宮前、青山といった限られたエリアに、イラストレーションに特化したギャラリーが集約して存在していたという、世界的に見てもレアな状況から、東京の街そのものがサロン化していたことが、ひとつ大きな原因ではないだろうか」と。

というわけで、
今度日本に来たらそうしたギャラリーを全部案内するから、覚悟して来てよ〜!と伝えました。

そんな発言をした自分が面白いと思えた台湾2days

あらためて、二日間ポストカードのようなものを売った売り上げとしてはどうだったんだろう?
清算は後ほどということで、主催者からは「おめでとうございます」だったり、「一緒にやれて勉強になりました」など声をかけてもらったけど、香港ドルのレート感がわからず、気がつけば自分はメシ食って現場とホテルを往復しただけなのに、お金けっこう無くなっているぜ、と。

ただ、そこに日本人が作ったイラストレーションだったり「kawaii」を求める、この場所にいることを幸せに思う2万人弱の人と顔を合わすことが出来た。それとても価値のあることだと思えたよ。

で、自分はTIS所属の作家さんからお預かりしたグッズを販売する責任があるので、自分のグッズを並べる隙間を見つけられず売らなかった。でも後で考えたら、香港の人1人ひとりとガッツリコミュニケーションとって、ポストカーでも絵本でも手渡したいと思ったんだろうね。

実は今回香港に行く前に、自分のSNSで「かわいいとはなんぞや?ちょっと香港に行って考えてくる」とポスト。

日本に帰ると、長年グッズ製作をしている作家の友人が

「かわいいとは「いのち」だと思います。」

とコメントくれてた。

そうなんだよ〜
今回香港のこの現場でやったのは、なんだか「いのちのやりとり」みたいなことだった。

世界とアジアと中国と香港と太平洋と日本と、自分たちが求める「幸せ」とは別に、手に負えない問題はある。
「手に負えない」「言葉に出来ない」なにかが、「kawaii」を介して共有され、共感を高め合った現場という実感。

何より、自分のようなHSP体質の者が、この人波の中に在ってもまったくストレスを感じなかっあたこと。

香港の人たちの熱は、他者を認め合おうとするマインドにギュッと抱きしめられて、熱々を保っているのだろう。

「kawaii」は「いのち」
「おしゃれ」は「POWER」
「やさしい」は「ある意味ファイティングポーズ」

香港はこんな言葉をボクの心に刻んでくれました。

シリウスさん、エリスさん、天才スタッフさん、香港のみなさん、
また元気で会いましょう!

アミイゴ
2024
0504
0505
PEACE!!

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